聖書

森の本棚

森に巣箱を置くように、クリニックには幾つかの小さな本棚が設えてあります。

そこに並べられた本たちについて少しずつ紹介します。

入れ替わりがあるので見当たらなければスタッフや院長にお尋ね下さい。

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しらふで生きる   町田康

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断酒を通して考える、人間とは何か 

​大酒飲みが繰り広げる面白おかしい断酒記録

30年間、毎日浴びるほどに酒を呑み、騒いではトラブルなどを起こし、しかし、それが本望と信じていた作家が突然に酒をやめた顛末について書かれた本です。

元々、くどくどと屁理屈をこね続ける、と言うのが芸で、それが面白く、哀れで、カッコ良く、かっこ悪くという作家ですから、もちろん、酒をやめた理由についてもくどくどと屁理屈をこね続けております。

作家はどういう心境で酒をやめようと思い、やめた後、どういう心境の変化が訪れたのか、落語のように可笑しい文体で、しかし克明に綴られています。

酒についての話はやがて幸福についての話に及び、ついには人生についての話に至ります。

考えてみれば、アルコール依存の人は人生を何年も酒に乗っ取られているようなものですから、人生の話になるのは当然のことかもしれません。

酒を止めることが出来た心境が、森の本棚①で紹介した「ダイエット幻想」で言及された結論に似ているのが興味深いことです。

つまり「他人と比べるのをやめましょう」「瑞々しい感性を取り戻しましょう」ということです。

実は当院の診察室でも良く、俎上に載せられるテーマであります。

現代の苦しみは様々な場面で共通しているのでしょう。

この本を読めばみんなお酒をやめられる、とは思いませんが、断酒によって良い変化が訪れた事例がいくつも書かれている事が非常に前向きに感じました。

酒をやめましょう、と言うと「もう人生は終わりだ」「なんの楽しみもない」と絶望する方が多いですが、主治医も家族も別にいじめたいと思っているわけはなく、辛苦を味合わせようとしているわけでもありません。

断酒のあとに訪れる、瑞々しい感性と健康を取り戻してほしいのです。

実際、断酒を苦行のように、捉えている方よりもやめてすぐに「楽になった」「これはいい」と感じられた方の方がやめられている確率が高いように思います。

断酒というのは、本来前向きなことです。

​と、深刻に話すのも気恥ずかしくなるほど可笑しい本なので気楽に手にとって見てください。